遺言書で出来ること
民法の法定相続分と異なる相続分の指定
たとえば、長男には全体の2分の1を、次男と三男には4分の1ずつを相続するなど、柔軟に決めることができます。
具体的な遺産の分割方法の指定
Aの土地は長男へ、Bの土地は次男へというふうに、具体的な遺産の分け方を決めることができます。
注意
民法では、法定相続人が必ず相続することができるとされている最低限の相続分(=遺留分)が保証されています。万一、遺言によって遺留分未満の財産しかもらえなかったときには、遺留分を侵した受遺者に対して1年以内に「遺留分の減殺(げんさい)請求」を行うことで、これを取り戻すことができます。
遺留分の割合
通常の場合は、遺留分は被相続人の財産の1/2。相続人が直系尊属のみの場合は、遺留分は被相続人の財産の1/3。尚、兄弟姉妹には遺留分はありませんのでご注意下さい。
財産処分に関すること
01第三者への遺贈。相続権のない人へ遺贈することができます
02公的機関や菩提寺への寄付
寄付という形で遺産を処分することができます。財団法人の設立を目的として財産を提供することも可能です。遺言書では、自分の遺産を社会のために役立てて欲しいという願いを実現することができるのです。
03信託の設定
一定目的のために、財産管理やその運用を指定した信託銀行に委託することができます。
財産処分に関すること
01推定相続人の廃除とその取り消し
推定相続人(相続人になる予定の人)を相続人から除外することができます。反対に、排除の取り消しも遺言で行なうことができます。推定相続人から虐待や重大な侮辱を受けている場合など、家庭裁判所の審判を経て、相続人から廃除することができます。
02子どもの認知
家族の手前など、さまざまな理由で生前に子の認知ができない人もいるでしょう。そのような場合にも、遺言で子の認知をすることができます。認知された子どもは法定相続人に加わるので、遺産を相続する権利を得ることができます。
03未成年後見人、未成年後見監督人の指定など
推定相続人が未成年の場合、後見人を指定することができます。ただし、これは遺言を残す人が最後の親権・管理権の所有者でなければなりません。要するに、片親の場合など、その人が亡くなってしまうと未成年者の親となるべき人がいなくなってしまうケースです。
遺言執行者の指定、指定の委託
確実かつスムーズに遺言を執行する。 遺言内容を実現するための執行者を指定したり、指定を第三者に委託することができます。
遺言の執行には、法定相続人全員の実印が必要になるなど、いろいろ細かな手続きが必要です。
従って、確実かつスムーズに遺言内容を執行するには、遺言執行人を指定しておくほうが望ましいでしょう。指定がない場合には、家庭裁判所が選任した人がなります。
遺言執行者は、遺言執行に関する権限を有しているため、相続人がその行為を行ったり、妨げたりすることはできません。従って、 第三者を遺言執行人に指定するときは注意が必要です。遺言執行人を信託銀行に頼むと遺言執行時に高額な執行報酬(財産 3億円で370万円程度)がかかります。
さらに、もめそうなときには、執行人を辞退される可能性があります。
遺言書の種類
自筆証書遺言
遺言者が遺言の全文(財産目録以外※)・日付・氏名を自署し押印する。
※平成31年の改正で、財産目録を添付する場合は、その目録を自書しなくても良いことになりました。
長所
- 作成が最も簡単
- 内容はもちろんのこと遺言書の作成そのものを秘密にできる
短所
- 紛失・改ざんの恐れがある
- 字が書けない人にはできない
- 検認が必要
- 要件を満たしていないと無効になる
公正証書遺言
2人以上の証人立ち会いのもと、遺言者が口述し、公証人が筆記し作成の後、公証人が読み聞かせ、内容確認の上各自署名押印する。
長所
- 紛失・改ざんの恐れがない
- 無効とされることが少ない
- 字の書けない人でも可
短所
- 費用がかかる
- 公証人とのやり取りに手間がかかる
- 遺言内容を秘密にできない
秘密証書遺言
遺言者が遺言の全文・日付・氏名を自署し押印する。
長所
- 遺言の内容を秘密にできる
- 改ざんの恐れがない
- 署名捺印できれば字の書けない人でも可(代筆可)
- 費用が安い
短所
- 検認が必要
- 要件を満たしていないと無効になる
遺言書の一般的な決まりごと
- 2名以上の人が共同で遺言することはできません。
- 遺言する者の遺言する能力(年齢、意思能力、法律行為ができる能力)があることが必要になります。
- 最新の日付と署名のある遺言書のみが有効となります。
- 遺言書に遺言執行者への報酬が記載されていない場合、家庭裁判所の判断に従う義務があります。
- 遺言執行に関する諸費用、財産目録作成、裁判執行者への報酬などは相続人が負担することになります。
- 一度作成した遺言書の内容を変更したい場合には、改めて遺言書を作り直すことができ、前に作られたものは無効となります。
- また、遺言書の全部または一部を遺言の方式にしたがって「撤回」することもできます。